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M&A備忘録

某投資銀行に勤めるアキラが綴るM&Aに関する備忘録。法制度や会計・税務の小ネタはもちろん、気になる事例の紹介や私見も書きたいと思っています

資本業務提携と株価への影響

 

今日(2013/5/13)は、通信会社を株式引受/取得先とする資本業務提携の発表がありました。

ひとつは、パイオニア、NTTドコモ、三菱電機による資本業務提携。パイオニアの第三者割当増資をNTTドコモ、三菱電機が引受けるというもの。

もうひとつは、KDDI(au)とぴあによる資本業務提携。こちらは第三者割当増資ではありませんが、KDDIがぴあの株式の一部を取得するというもの。

いずれもスマートフォン関連の技術を軸とした提携を模索している様子。先日、ソフトバンクも、スマホ向けゲーム、パズル&ドラゴンズ(パズドラ)で空前の好業績を記録しているガンホー・オンライン・エンターテイメントの株式を追加取得し子会社化していますし、当面は「スマホ関連」が大テーマとして意識されるのでしょうか。

 

さて、今日のテーマは、資本業務提携にはつきものの、第三者割当増資について。増資と聞くと、一株当たり利益(EPS)の希薄化に伴い、株価が下落するという負のイメージが先行してしまう方も多いでしょうが、果たしてどうなのでしょうか。今一度、当たり前の議論ですが、きちんと整理したいと思います。

市場株価は理論的に「EPS×PER」で求められます。EPSとはEarning Per Sharesで「利益/株式数」で求められます。PERとはPrice Earning Ratioで「時価総額/利益」で求められます。

もうお分かりの通り、EPS×PERは時価総額を株式数で割ることと同じであり、それはすなわち市場株価となるわけです。

さて、PERは株式市場で決まる時価総額(株価)と利益との関係なので、一企業にとっては所与の値と考えることが可能です。通常、利益が増えれば株価は上がりますからPERは一企業ではコントロール不可能です。なお、PERは、株式市場においては割高銘柄/割安銘柄を見つける材料として使われますし、日経新聞にはPERの平均値が毎日掲載されています。株式投資をされる方にはおなじみの指標でしょう。

従って、PERが所与ということになれば、理論的には、企業はEPSを上昇させること、すなわち、分子である利益を増やすこと、又は分母である株式数が減らすことで自社の株価を上昇させることができます。なお後者の場合には、時価総額は増えませんが、市場株価の梃入れのために自己株式取得を行うロジックはここにあります。

さて、第三者割当増資の場合、分母の株式数が増えてしまいますので、EPSが減少してしまいます。従って、株価が下落してしまうという反応が生じるわけです。通常、第三者割当増資の発表があった銘柄を保有している既存株主は、翌日の寄り値を気にしてそわそわしまうわけです。

 

しかし、第三者割当増資を行った企業の株価が上昇するケースも多々あります。それは、EPSが上昇する期待が生じる、すなわち分母の株式数が増えてしまうものの、分子の利益もまた上昇することと考えられる場合です。

 

今回のパイオニアのケースでは前期の業績が大幅な赤字で、きちんとした数値の分析を伴うことは難しいですが、ひとまずは分子の利益もプラスかつそれなりの上昇が期待できれば、明日の株価は堅調に推移するといったところでしょうか。ひとつ注視したいと思います。