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M&A備忘録

某投資銀行に勤めるアキラが綴るM&Aに関する備忘録。法制度や会計・税務の小ネタはもちろん、気になる事例の紹介や私見も書きたいと思っています

リーク報道と適時開示(東証ガイドラインの改正を踏まえて)

 

2014年3月期決算の発表がヤマを迎える中、5月13日には三菱ケミカルホールディングスが大陽日酸をTOBを経て子会社化する報道、5月14日にはKADOKAWAとドワンゴが経営統合する報道、5月15日にはパイオニアがのホームAV事業を売却する報道が出ました。この3つの事例に共通するのが会社が正式に発表(適時開示)を実施する前に日本経済新聞が報道を行う、すなわち「報道等により投資者の投資判断に重要な影響を与えるおそれのある情報が発生」したケースに該当するということです。いわゆるリーク報道があったということですね。

これまでこのようなケースにおいては、

・「決定した事実はない」

・「当社が発表したものではない」

というお決まり文句を開示し、ザラ場終了後の15時に平然と適時開示を行うことが通例として行われてきました。まぁある意味正しい(朝の段階では取締役会決議はやっていないので決定した事実はないし、当社が発表したものではない)のですが、東証としてもこのような紋切り型の開示には頭を悩ませていました。

そこで、東証が2014年4月4日付でリリースした「不明確な情報への機動的な注意喚起を行うための開示注意銘柄制度の改善に係る上場制度等の見直しについて」で、2014年5月から、より踏み込んだ適時開示を行うよう求めてきました。

具体的には、東証が必要と認めた場合には、機動的かつ柔軟に、投資者に対して不明確な情報の存在を周知して注意喚起を行うため、取引参加者への通知、報道機関への公表及び当取引所のホームページへの掲載等の方法により、投資者に対する注意喚起を行うというのです。

 

この内容を踏まえ、5月13日に報道された三菱ケミカルホールディングスの大陽日酸に対するTOBにおいては、午前7時45分の段階で、

「本日、一部報道機関において、公開買付けに関する報道がありましたが、当社が発表したものではございません。 当社と株式会社三菱ケミカルホールディングスは、資本業務提携関係のさらなる強化に関する検討を行っております。資本業務提携関係強化の内容については、本日開催の取締役会に付議する予定であり、決定しましたら速やかに開示いたします。」

というこれまでにない踏み込んだ開示を実施し、同日に正式決定の適時開示を行っています。

 

同様に、5月14日に報道されたKADOKAWAとドワンゴの経営統合においては、午前8時の段階で、

「本日、経営統合に関する一部報道がなされておりますが、当社として発表したものではございません。 本件については、本日開催の取締役会に付議する予定であり、決定しましたら速やかに開示いたします。」

と、こちらも同日の取締役会決議を行うという開示を実施し、同日に正式決定の適時開示を行っています。

 

一方、5月15日に報道されたパイオニアのホームAV事業の売却においては、午後0時の段階で、

「当社のホームAV事業の売却に関する一部報道がありましたが、これは当社が発表したものではありません。当社は同事業の抜本的見直しについて、子会社株式の一部売却を含めた協業等、様々な選択肢を考慮し検討しておりますが、船井電機株式会社を含め、特定の相手との間で決定した事実は何もありません。」

と、上記2つの事例と比較した時の温度差がある開示となっていることがわかります。日本経済新聞の報道でも、「7月には売却にめどをつけたい意向」とあり、このような開示の文言になったことが推測されます。