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M&A備忘録

某投資銀行に勤めるアキラが綴るM&Aに関する備忘録。法制度や会計・税務の小ネタはもちろん、気になる事例の紹介や私見も書きたいと思っています

企業不祥事とM&A

 

最近、日本企業の不祥事の報道が絶えません。日本を代表する大手企業である東芝や三菱自動車、全世界的なエアバックリコールで揺れるタカタがメディアを賑わせています。

無論、株主、債権者、従業員、取引先等のステークホルダーに多大な損害を与え、企業の社会的責任(CSR)の対極に存在するという点では不祥事は言語道断である一方、M&Aの観点では千載一遇のチャンス到来と考えることができます。買い手側からすると、普段では決して売り物として登場しない企業、事業が、相手の敵失で突如売り物として並ぶわけですから想像に難くないでしょう。しかも相手が切迫しているほど安く買える可能性も秘めています。また、産業構造といったややマクロ的な面からすれば、生産性・効率性向上、技術力の融合による新たなイノベーションの創出などが進む期待があるでしょう。

企業が不祥事に直面すると、売上げの減少や多額の減損損失、引当金の計上によって大赤字となることを通じて、最終的には純資産の毀損が起こります。また売上げの減少でキャッシュインが滞り、資金繰りに窮する場合もあります。これらへの対応策を不祥事を起こした企業としては考えるわけですが、その対応策は大きく2つに分けられます。ひとつは増資(多くの場合は第三者割当増資)、もうひとつは資産売却です。

 

例えば燃費試験における不正を行っていた三菱自動車。軽自動車の販売停止を余儀なくされ、売上げの急減や補償実施による赤字決算を通じた純資産の毀損、資金繰りの悪化の懸念は拭えません。そのような中、軽自動車の共同開発パートナーであった日産自動車に対して第三者割当増資を行うと発表しました。第三者割当増資は株式を新たに発行して返済不要の金銭を株式割当先から調達する行為で、株式発行企業の貸借対照表の現預金と純資産が増えることから、不祥事を起こした企業からすれば純資産の毀損の手当てにも当面の資金繰りの確保にも対応できる策です。また、資金の出し手である日産自動車からすれば、三菱自動車の有する軽自動車以外の技術力の活用がかなり魅力的にうつっている可能性があります。まさに不祥事なかりせば手に入れられなかった千載一遇のチャンスを掴んだと言えるでしょう。

また、自動車業界で今揺れているのは全世界的なエアバックリコールを抱えるタカタですが、こちらは米国の投資銀行Lazardをアドバイザーに起用して危機を乗り切ろうとしています。既に米国の投資ファンドKKRや中国企業が関心を示しているとの報道がありますが、補償の規模が分からない、つまり簿外債務の額が判然としない状況では出資の判断ができないでしょうから、出口はまだまだ先になると思われます。

 

また、不正会計に揺れた東芝。減損損失や事業整理を余儀なくされ、純資産は大きく毀損されました。そんな東芝が取った対応は資産売却の道でした。国内企業では東芝メディカルシステムズをキヤノンに、NREG東芝不動産を合弁相手先の野村不動産に、上場企業のトプコンの株式も売却しました。海外企業では上場企業のKONE Corporationの株式を売却しました。このように売却可能な資産がある場合には、事業整理を兼ねて資産売却を進め、今後の事業運営の効率化を図ることもあります。